TRPG関係記録置き場

TRPGの忘備録置き場。 セッション日記とか、SSとかごったまぜ。   mixi日記やtwitterだと流れてしまうので、後々読み返す時に不便だなーと思ったので。10年後に読み返して笑いたい。

シノビガミ キャラSS 空の蒼を知らないキミへ 1話シーン起こし

シノビガミキャンペーン「空の蒼を知らないキミへ 」の1話のシーン起こし。

サシャと二回目に会うシーン。

初邂逅は、中層に忍び込んだサシャと一人で遊びに来たループレヒトが会って、貴族っぽく助け舟を出したり気がする(雑な説明)。

※「冒険企画局」及び「河嶋陶一朗が権利を有する『忍術バトルRPG シノビガミ』の二次著作物です。

 

 

クラウス「サシャ、どうして…」

サシャ「中層への荷物に紛れ込んでだよ」

そこじゃないな!

 

あと。下記のような会話がありました。

PL「どっちがいいですか?名前を自分で名乗るのと知られてるの?」

PL「知られてる方で!」
ルー「失礼しました、サシャ・トールキン
サシャ「おまえ、なんで、私の名前…」
ルー「知りたいと思ったことは、知り得る立場にいますので」

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私は次のシーンが大好きです。

 

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カツンと靴音が響くが、教会の中の人間は、誰も新たな来訪者の気配に注意を払うことはなかった。人の行き来が絶え間なくある産業区において、いちいち気にしてはいられないのだろう。ひょっとしたら、新しく修理の依頼を持ち込みに来た人間と思われたのかもしれない。
子どもたちはわいわいと騒いでいて、その中心には、入口に背を向けた少女がいた。

「せいがでますね、フロイライン」
「!!!?? なっ!?」

集中しているらしい少女に、来訪者が背後から声をかけると、少女は驚きに手にしていた修理中のおもちゃを手から落とす。
教会の中に入り込んできた青年は、金髪碧眼、体にピッタリと合った白絹の装衣に身を包み、白手袋を着用し、腰には帯刀が見て取れる。
ーー貴族だ。

少女の瞠目とともに、場は完全に沈黙した。貴族を前に不用意なことを喋れば首が飛ぶ。そもそも、場の人間たちは貴族をこんなに身近に見たことがなく、戸惑いが動きを止めさせる。

(こいつ……ループレヒトとか言ってた貴族……)
コロコロと足元に転がってくる、まだガラクタのそれをループレヒトは拾い上げる。
「……」
数秒観察しただけで、ループレヒトは少女の高い技術を知れされる。駄賃にもならないだろう仕事に丁寧なよい仕事をする、とループレヒトは感じた。

お抱えの技師にこのレベルの仕事ができるだろうか?
少女が、サシャ・トールキンという名前だということはメイド長から報告を受けている。クラウスとは、この高い技術力が縁で知り合いになったのだろうか。

そこまで思考を巡らせて、カツリと少女にまた近づく。サシャと周囲の人間はいまだ石のように固まっている。ループレヒトは注目を集めていることを知りつつ、サシャの前で恭しく跪き、驚きがまだ引かない少女の前に、白手袋を着けた手の中の玩具を差し出して、ニコリと笑った。
「お返しします」

サシャは驚き、困惑した。確かこの青年は、先日、中層で出会った貴族然とした態度を隠そうとない貴族だ。しかしながら、会話が通じたという点とサシャを助けたという点で変わった貴族ではあることはすぐに分かった。招待めいたようなことを受けたが、身分というものを理解しているサシャは、もう二度と会うことはないだろうと思っていたのだ。
(……こいつ、何しに来たんだ?)
わざわざ教会に入り込んできた以上、見回りではなさそうだ。ともかく、跪く体勢は苦しかろうと、差し出された玩具を受け取ると、ループレヒトはサッと立ち上がった。そんな態度も貴族然としていて、心がざわめく。
この貴族はクラウスの知り合いでもあるようで、もう二度と会うことができないクラウス兄のことを否が応でも想起させずにいられなかったからだ。
そこまで考えて、サシャは貴族に目を向けた。膝を地につけたことで、貴族の青年の足元は汚れたが、笑顔の青年がそのことを気にした素振りはない。
ループレヒトと以前名乗った貴族は、刹那、サシャの顔に目を留めて、おや、と眉を上げた。
「その耳飾りは、クラウスとお揃いですね?」
「!? クラウスが? 今もこの耳飾りをつけているのか?」
反射的に言葉が出た。
「はい。随分、大事にしていますよ。……クラウスとあなたは親しいのですね」
続けられたことばに、サシャの胸は憧憬に熱くなる。対して、少女の口元の綻びを認めたループレヒトは、喜び半分、複雑さ半分といった表情を浮かべ、少し悩む様子を見せた。
ここで、ようやく傍の子供たちが動き出した。考え込むようなループレヒトの様子を傍らの子どもたちは、不審に感じたらしい。
魔法が解けたように、ループレヒトを取り囲み、ぽかぽかと拳で腰や腹を殴りつけているものまでいる。
「ちょ、おまえら……!?」
目の前のは貴族だ、止めろ。
サシャの声は子どもたちの声にかき消えていく。
「なんだ、おまえ、あやしいやつめ!!!」
「さいきん、人がゆくえふめいに、なってるのは、おまえがさらってるんだな!?」
「サシャねーちゃんは、おれたちが守る!」
子どもたちはサシャを庇うように、ループレヒトとサシャの間に割って入る。
怪しい、怪しいと言い募る子どもの拳を白手袋で受け止めて、ループレヒトは困り顔を浮かべている。
屈んで子どもに視線を合わせ、
「サシャは頼りになるだろう? ぼくを助けて欲しいと思っていて」
必死に説得を試みることにしたようだ。

不遜で切り捨てても良さそうなのに、サシャは帯刀している剣に目を留めて考えた。何を考えているのだろう?
お貴族様の思考はわからないが、穏便に済ませようとしているようだと判断したサシャは助け舟を出す。
「みんな」
と声を上げると、子どもたちもループレヒトもサシャを見た。
「知ってるだろ? あたし、強いから平気だよ」
何かあったらぶん殴ってやる、とカラリと笑うと子どもたちに安堵の表情が広がる。ループレヒトが一番安堵したような表情を浮かべていたことに、サシャは内心で笑った。

 

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クラウスとのシーン

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男が倒れた。騎士に拒絶された結果のことである。
乱暴すぎではないかとループレヒトは感じだが、この辺りは感覚の差かもしれないと非難するまではしなかった。騎士にもいろいろ事情はあろうし、自分は騎士ではないのだから。代わりに、男に寄り、助け起こす。
「大丈夫ですか? 怪我はありませんか」
「なんだよ、おまえ。おれは騎士に用があるんだ」
「ぼくは騎士ではありませんが、貴族です。ある程度、顔は効きますし、……騎士に知り合いもいます」
クラウスに視線を送ると、クラウスが息をつくのが見えた。これはループレヒトにとっては、了解と同義だ。
「……イエス、マイロード」
果たして、クラウスはループレヒトの前に進み出た。ここからは引き受けるとの意図を感じ、ループレヒトは逆に一歩下がり、状況を見守るに努める。
男はクラウスが名乗り出ると、縋り付くように身の上を語り出す。妹がいなくなったのだという。痛ましいことだ。
助けてください、騎士さま。
何度も何度も祈るように繰り返す男にクラウスは声をかけて、宥め、男を落ち着かせることに成功していた。
(差を感じるな、まいったな)
自分にはできず、彼ができることを目の当たりにするのはもう何度目だろうか。
微笑みを絶やさずにいられたのは、単に自分が見栄っ張りだからだろう。